『ヨモツイクサ』=知念実希人

今回もいつものストーリーを裏切る展開であった。

去年出されたばかりの新刊であり、以降はネタバレになってしまうのでまだ読んでおらず楽しみにしている方は控えていただきたい。

帯にも書かれているが 著者 知念実希人初のバイオ・ホラーである。
「黄泉の森 はアイヌの人々が恐れた 禁域。 侵入すればヨモツイクサの餌食になるよ」
「最近も リゾート開発を始めた会社の作業員たちが行方不明になり 現場には何かに蹂躙された痕跡だけ残されていました」
「警察は昼間だと断定しましたが あんな 殺戮は考えられません。 」
「7年前にもあったんだ、禁域 のそばの一家が行方不明になった 神隠し事件が。残された女医は今も家族を探し続けているよ」
「2つの事件はヨモツイクサの仕業なんでしょうか。 これは噂ですが 作業員も死ぬ直前に 神秘的な蒼い光を見たそうです」

いったいどんな物語なのか。はやる気持ちを抑えながら丁寧に読み始めた。

物語は昔話から始まる。ある村で飢饉が起こり困り果てているところに遠くの村の村長がやってくる。村長は嫁を出せば村に大金を出すという。「ハル」という器量よしの少女が嫁に出ることを決意し、村に行ったところ実は自分はいけにえとしてささげられるのだった。
そして現代。家族が行方不明になった女医の「茜」のもとに手掛かりとなるかもしれない情報を持って刑事がやってくる。刑事は禁域にクマがでたようなので猟師を探しているのだが禁域は「黄泉の森」なので恐れて猟師が集まらないと言う。自分も狩猟免許を持ち猟友会に属している茜は捜査を志願する。そして、刑事たちと猟友会、茜を含む数十人の駆除隊は黄泉の森へ出動する。

今秋田では土崎のスーパーでクマが立てこもり、駅前でも目撃される有様だ。人間の食料のおいしさを一度味わってしまったクマはたとえ森でエサが豊作であっても人里におりてくるようになる。ヨモツイクサの話ではタイムリーな話題を盛り込んでくるところが余韻を長く残す強力な一因となっている。

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