『「身体」を忘れた日本人』=養老孟子

秋田市立図書館・明徳館から電子書籍の自動貸し出しのメールが来た。
特に「借りる」操作をしなくても自動的に貸し出しとなり、1週間後に強制返却される仕組みのようだ。

『「身体」を忘れた日本人』。第1章は 森と川と海のこと。手入れの行き届いた「山」が荒れると洪水が起こる。
戦時中から木材が足りなくなり政府の方針で「杉」を大量に植林した。生態系を無視した植林はやがて固い土を作り出す。やっと育った杉も大きくなったころには輸入木材の方が安いと買い手がつかない、ますます山は荒れる、山があれると保水力がなくなり洪水が起こる、洪水を防ごうと川にダムをつくる、ダムが川を遮断し魚も遡上できなくなる。
積み重なった小さな誤修正がやがて取り返しのつかないほどそれた方向にいく過程を詳しく述べられている。
このような状況でもあきらめず、山と川をまるごと元通りにするという途方もない規模の作業を専門知識を持ってニコルが進めていく。

第2章 食べること・住まうこと では、人間関係が保険会社が保証する話が出てくる。電気ポットを押すかどうかで離れた親が無事かどうかが分かる仕組みについて言及。電話すればいいだけの話ではないかという聞き手の青山氏の意見があった。ことはそう単純ではないような気がするが。

対談の相手、ニコル(アファンの森財団)氏の父が残した言葉「海は7つもありません、一つです」が心に刺さる。

第3章は 子どもたちと教育のこと。『14歳の私が書いた遺書』を読んだ時の感想ではその遺書の中に花鳥風月がひとつもなかった、「桜が咲いた」とか「台風が来た」というような話は一切なくて「先生がこういった」「お兄さんがどうした」とう話ばかり。本来世界は4つ、人間の世界のプラスとマイナス、自然の世界のプラスとマイナスのはずなのに自然がないから人間の世界で行き詰まると行き場がなくなると書かれていた。

第6章 聞くこと、話すこと では日本の子どもは自然があるのに遊ばないから、自然を表す言葉がなくなって、そうすると存在までなくなる、つまり「言葉には魔力がある」。と述べられている。

聞き手の青山氏の意見は批判めいたものが多く少々とげがあり賛同できかねるが、対談の養老先生とニコル氏の知識が深くところどころ調べながら読み進めた。自然分野を知るうえで大変参考になった。

本の内容に没頭するあまり、電子書籍なのに指で紙をめくろうとしてしまった。

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